大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)82 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人桃沢全司の上告趣意第一点について。

原判決が、第一審判決が被告人の本件犯罪事実を認定するにあたり、被害者Aが

所持していた風呂敷包の中には現金十八万円及び小切手一枚(額面二十万円)が在

中し、被告人がこれを掏り取ろうとしたもののように判示しているにかかわらず、

証拠として引用した証人Aの原審(第一審)公判廷における供述によると、当時額

面二十万円の送金小切手は同伴していたB事務員に所持させていたことが明らかで、

他に当時Aが風呂敷包に額面二十万円の小切手を入れて所持していたと認め得られ

る証拠はないことを認めながら、しかも「故にこのことを捉えて論旨の如く強いて

事実誤認といえばいえよう。然し右の誤認は決して窃盗未遂罪の構成要件たる事実

についての誤認でないことはそれ自体明らかである」と説示したことは所論のとお

りである。而して原審の右説示はその用語に妥当を欠くものが存するけれども、そ

の本旨とするところは第一審判決の右事実誤認は未だもつで判決に影響を及ぼさな

いことを説示せんとしたものと解するを相当とすべきところ、掏り窃盗の未遂にお

いては犯罪実行の着手ある以上はたとえ現実には目的物が存しない場合においても

窃盗未遂罪の成立に妨げなきことに徴し、右事実誤認が判決に影響を及ぼさないも

のとした原判決は相当で、判例違反を主張する論旨は採用できない。論旨引用の大

審院判決は横領既遂罪における認定事実と証拠とのくいちがいの事例であつて本件

に適切でない。

同第二点及び被告人の上告趣意について。

論旨はいずれも事実誤認の主張であつて、上告適法の理由にならない。

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また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す

る。

昭和二七年七月一五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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